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有責配偶者からの離婚請求:長期の別居期間をどう考えるか
「私が離婚の原因を作った側(有責配偶者)ですが、離婚するにはかなり長い別居期間が必要だと聞きました。これについてどう考えたらいいでしょうか?」
有責配偶者からの離婚請求は、原則として認められにくいのが日本の法律の考え方です。しかし、例外的に離婚が認められるケースもあり、その中で重要な要素となるのが「相当の長期間にわたる別居」です。
ある裁判例では、この「相当の長期間」について、次のように述べています。
「夫婦の別居が両当事者の年齢及び同居期間との対比において相当の長期間に及んだかどうかを俯瞰的に判断すべきものであるが、その趣旨は、別居後の時の経過とともに、当事者双方についての諸事情が変容し、これらのもつ社会的意味ないし社会的評価も変化することを免れないことから、右離婚請求が信義誠実の原則に照らして許されるものであるかどうかを判断するに当たっては、時の経過がこれらの諸事情に与える影響も考慮すべきである……。したがって、別居期間が相当の長期間に及んだかどうかを判断するに当たっては、別居期間と両当事者の年齢及び同居期間とを数量的に対比するのみでは足りず、右の点をも考慮に入れるべきものであると解するのが相当である。」
この判例では、具体的な別居期間として「8年が相当である」と示されましたが、一律に「この期間であれば相当な長期間になる」とは明示されていません。
「相当の長期間」を判断する際のポイント
この判例が示す最も重要なポイントは、単に別居期間の長さだけでなく、時間の経過とともに夫婦双方の状況がどのように変化し、その社会的評価もどう変わったかを考慮すべきだという点です。そして、その上で「信義誠実の原則」に照らして、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかを判断します。
具体的には、裁判所は以下の点を重視します。
- 有責配偶者による「真摯な対応」の有無
- 別居期間中に、あなたが相手方配偶者に対し、経済的な補償を申し出るなど、誠実な対応をしてきたか。
- 相手方配偶者の反応
- 相手が、あなたの提案に対してどのような反応を示しているか。
- 時間の経過が諸事情に与える影響
- 別居後の時間の経過の中で、双方の状況(経済状況、精神状態、家族関係など)がどのように変化したか。
つまり、裁判所は、有責性の程度に応じて、離婚を求めるのであればそれ相応の責任を果たすべきであると考えています。判例解説でも、有責配偶者の婚姻継続への意思や相手に対する感情、そして離婚を認めた場合に相手が置かれる精神的・社会的・経済的な状況をどれだけ考慮しているかが重要だと述べられているものもあります。
この裁判例は、有責配偶者側の事情と、それに対する相手への配慮や補償のバランスを見ています。「相当の期間」とは、婚姻関係の破綻を裏付けるものとしての調和がとれているかを考えるものです。
実務においては、この判例で示された8年よりも短い別居期間で離婚が認められるケースもありますが、その場合、交渉や協議の枠組みがより一層重要になってきます。
有責配偶者からの離婚請求はデリケートな問題であり、個別の状況に応じた戦略が必要です。お困りの方は、ぜひ弁護士法人かがりび綜合法律事務所にご相談ください。
相手方が有責配偶者である場合:交渉は有利になりますか?
「もし相手方が有責配偶者(不貞行為やDVなど、離婚の原因を作った側)の場合、こちらが離婚交渉で有利になりますか?」
はい、その通りです。相手方が有責配偶者である場合、原則としてあなたが交渉を有利に進められる可能性が高まります。
相手が不貞行為やDVなどの「有責性」を認められる場合、あなたは相手に対して慰謝料を請求する権利を持ちます。この慰謝料請求権は、離婚交渉において非常に強力な交渉材料となります。
具体的には、以下のような点で有利になる可能性があります。
- 慰謝料の獲得:相手の有責性が明確であればあるほど、高額な慰謝料を獲得できる可能性が高まります。
- 財産分与の交渉:有責性とは直接関係ないものの、相手が離婚を急いでいる場合など、財産分与の交渉においてもあなたの希望が通りやすくなることがあります。
- 親権の獲得:相手の有責性(特にDVや子どもへの虐待など)が子どもの監護に悪影響を与えていると判断される場合、親権獲得において有利に働く可能性があります。
- 離婚の合意形成:相手が有責配偶者であると、裁判に進んだ際に不利になることを避けるため、あなたの提示する条件での離婚に応じやすくなる傾向があります。
ただし、相手の有責性を主張し、慰謝料を請求するには、具体的な証拠が不可欠です。例えば、不貞行為であれば、相手が認める書面、写真、メールやLINEのやり取りなどが有効な証拠になります。DVやモラハラであれば、診断書や日記、録音などが有効な証拠となり得ます。
相手が有責配偶者であるからといって、必ずしも全てが自動的に有利になるわけではありません。適切な証拠収集と、それを基にした戦略的な交渉が非常に重要です。
もし相手方が有責配偶者で離婚を考えている場合は、早めに弁護士に相談し、有利な条件で離婚を進めるための準備を始めることを強くお勧めします。当事務所では、あなたの状況を詳しく伺い、最善の解決策をご提案させていただきます。
ご自身のケースが有利に進められるか、具体的な証拠が何になるかなど、気になることはありませんか?
