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【大阪の離婚弁護士が解説】定年退職は「熟年離婚」のチャンス?夫と妻の意識差と、損をしないための「お金」の戦略
こんにちは。大阪府の、弁護士法人かがりび綜合法律事務所・代表弁護士の野条健人(のじょう けんと)です。
「夫が定年退職する日に、離婚届を渡そうと考えています」 「妻から突然、離婚したいと言われました。寝耳に水です」
当事務所には、このような**「熟年離婚(定年離婚)」**に関するご相談が急増しています。 長年連れ添った夫婦が、人生の第2ステージを前に別々の道を歩む。これは決してネガティブなことばかりではありませんが、準備不足のまま感情だけで動くと、老後の生活資金が枯渇し、共倒れになるリスクも秘めています。
今回は、熟年離婚の実態と、定年を機に離婚を考える際に絶対に知っておくべき「お金(退職金・年金)」の戦略について解説します。
1. 「まさか!」と驚く夫、「やっと…」と安堵する妻
熟年離婚とは、一般的に20年以上連れ添ってきた夫婦が離婚することを指します。中でも、夫の定年退職を機に妻から切り出すケースを「定年離婚」と呼びます。
このご相談をお受けする際、私はいつも「夫婦間の意識のズレ」の大きさに驚かされます。
夫側の意識:「平穏無事だと思っていた」
多くの男性にとって、定年離婚の申し出は「青天の霹靂」です。 「俺は家族のために40年間働いてきた」「大きな喧嘩もなかった」 そう信じていたのに、退職祝いの花束の代わりに離婚届を突きつけられ、狼狽する方が少なくありません。
妻側の意識:「Xデーに向けて準備してきた」
一方、妻側にとって、これは突然の出来事ではありません。 「子供が成人したら」「夫の退職金が出たら」 何年も、あるいは何十年も前からそのタイミングを見計らい、虎視眈々と準備を進めてきた「計画的行動」であることが多いのです。
表面上は穏やかに見えた夫婦生活の裏で、妻は孤独に耐え、夫はそれに気づかない。この**「意識の乖離(かいり)」**こそが、熟年離婚の最大の特徴です。
2. なぜ今、「熟年離婚」が増えているのか?
厚生労働省の統計によると、離婚全体に占める熟年離婚(同居期間20年以上)の割合は、昭和60年の12.3%から、令和3年には**21.1%**へと倍増しています。 なぜこれほどまでに増えているのでしょうか。背景には3つの要因があります。
- 「人生100年時代」への絶望と希望 子育てが終わった後、老後は30年以上続きます。「今まで我慢してきたのだから、残りの人生くらい自由に生きたい」。夫の世話や介護に縛られる未来を拒絶し、自分を取り戻したいと願うのは自然な感情です。
- 女性の経済的自立 かつては「経済的に無理だから」と諦めていた女性も、共働きや資格取得により、一人でも生きていける基盤を持つ方が増えました。
- 「年金分割制度」の導入(決定的要因) 2007年の制度改正により、専業主婦でも夫の厚生年金記録を最大2分の1まで分割(自分のものに)できるようになりました。「離婚=老後の貧困」という図式が崩れたことが、背中を押す大きな要因となっています。
3. 定年退職が「トリガー」になる理由
熟年離婚の動機を聞くと、多くの女性(一部男性も)がこう語ります。
- 「夫が一日中家にいると思うと息が詰まる」
- 「現役時代は不在がちだったから我慢できたが、24時間一緒は耐えられない」
- 「過去の浮気や、長年のモラハラを許していない」
- 「これ以上、家政婦やATM扱いされたくない」
これらは、定年を機に突然生まれた不満ではありません。**「以前から蓄積していたマグマ」**です。 夫が会社という居場所を失い、家庭に常駐するようになった瞬間、そのマグマが噴火し、「もう限界」と別れを決断させるのです。
4. 【重要】定年退職を機に離婚を進めるべきか?
では、感情のままにすぐ離婚すべきでしょうか? 弁護士としての答えは、**「イエスでもあり、ノーでもある」**です。 熟年離婚を成功させる鍵は、タイミングと「お金」の確保にあります。
戦略①:退職金(退職手当)は「財産分与」の対象
ここが最大のポイントです。夫の退職金も、夫婦が協力して築いた財産とみなされ、原則として「半分」を受け取る権利があります。 (※結婚期間に対応する部分に限ります)
- まだ退職していない場合: 「数年後に確実に支給される」と見込まれるなら、将来の退職金も分与対象に含めるよう主張できますが、金額の確定が難しく、争いになりがちです。
- 退職金が支払われた直後: 現金として口座にある状態なので、最も確実に、かつスムーズに半分を請求できます。
つまり、**「退職金が支払われるのを確認してから(あるいは支払われる直前に)切り出す」**のが、経済的には最も賢い戦略と言えるケースが多いのです。
戦略②:年金分割の手続きを忘れない
前述の通り、厚生年金の分割は必須です。ただし、自動的に分割されるわけではありません。離婚時に(あるいは離婚後2年以内に)手続きを行う必要があります。 当事務所では、年金事務所への情報通知請求からサポートし、将来の受給額の試算に基づいたアドバイスを行います。
戦略③:住宅ローンの完済と住居
定年時には住宅ローンを退職金で一括返済するご家庭も多いでしょう。 「ローンがなくなった自宅をどう分けるか」 妻が住み続けるなら代償金を夫に払えるか、売却して現金を分けるか。老後の住まいを失わないよう、慎重なシミュレーションが必要です。
5. 熟年離婚を迷っている方へ:かがりび綜合法律事務所のスタンス
「長年の情があるから迷う」 「一人で生きていけるか不安だ」
そう思うのは当然です。しかし、我慢して同居を続け、心身を病んでしまっては、せっかくの老後が台無しです。 逆に、準備不足で離婚し、経済的に困窮してしまうのも避けなければなりません。
当事務所では、以下の3つのステップで熟年離婚をサポートします。
- 現状の分析: 相手の退職金の額、年金見込額、不動産の価値を正確に把握します。
- 生活設計のシミュレーション: 離婚後の生活費と、得られる財産を照らし合わせ、「本当に生活していけるか」を現実的に診断します。
- 穏便かつ確実な交渉: 長年連れ添った相手だからこそ、感情的にもつれると泥沼化します。弁護士が間に入ることで、過去の清算を冷静に行い、お互いが納得できる「卒婚」の形を目指します。
6. 最後に:残りの人生を「誰」のために使いますか?
人生100年時代。60歳で定年を迎えても、あと30年、40年の時間があります。 その長い時間を、顔も見たくない相手の機嫌を伺って過ごすのか。 それとも、限られた資金であっても、心からの自由と平穏を感じて過ごすのか。
その選択権は、あなた自身にあります。
「熟年離婚なんて恥ずかしい」「今さら…」と思う必要はありません。 あなたの新しい人生の幕開けが、希望に満ちたものになるよう、私たちが法律と戦略の力で全力でサポートいたします。
まずは一度、これまでの結婚生活の「棚卸し」をするつもりで、ご相談にいらしてください。
弁護士法人かがりび綜合法律事務所 代表弁護士 野条 健人 (大阪弁護士会所属)
