代表弁護士の野条です。離婚慰謝料を請求できる場合とはどのような場合でしょうか?
本日はこれについて解説していきます。
離婚慰謝料を請求できる場合とは、夫婦の一方に主な離婚の原因と責任がある場合です。以下、例を挙げます。
⑴ 配偶者の不貞行為 不貞行為とは、いわゆる浮気・不倫のことです。 世間一般で使われる浮気・不倫については、人それぞれで微妙に判断が分かれます。相手とデートをした場合に浮気・不倫と捉える方もいるでしょうし、メールやSNSで相手に性的な興味・好意を示した場合には、気持ちとして配偶者を裏切った以上、浮気・不倫にあたると考える方も多いと思います。 しかしながら、慰謝料の発生に焦点を当てますと、慰謝料が発生するような不貞(浮気・不倫)とは、性行為や性交類似行為(一緒にお風呂に入る、裸で抱き合うといった行為)をいうことになります。 不貞(浮気・不倫)を原因に慰謝料を請求する場合には、性交渉や性交類似行為があったことを立証することになります。
⑵ 悪意の遺棄 民法第752条には「夫婦は同居し、互い五協力し扶助なければならない」と規定されており、夫婦は相互に扶助義務(協力し助け合う義務)があります。 夫婦は、法律上扶助義務を負いますので、合理的な理由もなく、配偶者を見捨てるような行為があった場合には、「悪意の遺棄」とみなされます。 「悪意の遺棄」とみなされるような例は、
・同居している家から配偶者を追い出す
・生活費を渡さない
・寝たきりの配偶者の面倒を見ない などです。
配偶者の一方が、相手に内緒で別居を敢行した場合に、「悪意の遺棄」と主張されることがよくありますが、相手に内緒で別居を敢行したからといって、その一事をもって直ちに「悪意の遺棄」と判断されることはありません。家に残された相手が、一人では生活ができないような状況に追い込まれるかどうかによって判断は変わります。
⑶ DV・モラハラ DVとは「ドメスティック・バイオレンス」の略で、夫婦間に限らず親密な関係にある相手との間における暴力をいいます。殴る蹴るといった直接の身体的な暴力に限らず、怒鳴り散らしたり、暴言を吐いたりという精神的な暴力や、性行為を強要するといった性的暴力も含みます。 モラハラは、「モラルハラスメント」の略で、精神的なDVとほぼ同義と考えてよいですが、暴言のような激しいものに限らず、冷たい態度や馬鹿にした言葉などで精神的な苦痛を与える行為を含みます。 DV・モラハラは、DV・モラハラがあったと認定されれば、当然に慰謝料の対象となります。DV・モラハラの被害者の方は、自分が悪いと思い込まされていて、DV・モラハラがあったとしても、自分のせいと考えてしまっている方も多くいます。配偶者の言動や態度について、少しでもDVやモラハラではないかと感じた場合には、迷わずご相談いただきたいと思います。
⑷ セックスレス セックスレスの夫婦は増加しており、セックスレスを含む性的不調和を離婚調停の離婚理由に挙げる方も数多くいます(令和2年度の司法統計では4500件以上)。現在では、セックスレスも立派な離婚原因、慰謝料請求原因に該当します。夫婦の一方が性交渉を望んでいるにもかかわらず、もう一方が、病気などの特別な事情がないのに、これを拒み続け、離婚に至ってしまった場合には、慰謝料を請求できる場合があります。