かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。有責配偶者からの離婚請求について、最高裁判例(平成16年11月18日判決)を基に、より詳しく解説します。
有責配偶者からの離婚請求とは?
夫婦関係の破綻について、主に責任がある側(有責配偶者)から、相手方に対して離婚を求める請求です。
裁判所の判断基準(破綻主義の採用と厳格化)
裁判所は、民法770条1項5号(婚姻を継続し難い重大な事由)に基づき、夫婦関係が破綻しているかどうかを判断します。しかし、有責配偶者からの請求については、以下の要素を総合的に考慮し、信義誠実の原則に照らして請求が許されるかどうかを厳格に判断します。
- 有責配偶者の責任の態様・程度:
- 不貞行為、DV、悪意の遺棄など、責任の重大性を考慮します。
- 相手方配偶者の婚姻継続の意思と感情:
- 相手方が離婚を強く拒否している場合や、有責配偶者に対して強い憎悪の感情を抱いている場合は、離婚請求が認められにくくなります。
- 離婚による相手方配偶者の精神的・経済的状態:
- 離婚によって相手方が精神的に大きな苦痛を受けたり、経済的に困窮したりする可能性がある場合は、離婚請求が認められにくくなります。
- 未成熟の子の監護・教育・福祉:
- 未成熟の子がいる場合、離婚が子の成長に与える影響を慎重に考慮します。
- 別居後の生活関係:
- 別居期間や、別居後の生活状況(経済的独立性など)を考慮します。
- 時の経過:
- これらの諸事情は時間とともに変化するため、時の経過が与える影響も考慮します。
具体的な判断要素(最高裁判例の要旨)
最高裁判例では、以下の3つの要素を特に重視しています。
- 別居期間の長さ:
- 夫婦の年齢や同居期間との対比で、相当の長期間に及んでいるか。
- 未成熟の子の存在:
- 未成熟の子がいる場合、その監護・教育・福祉への影響を考慮します。
- 相手方配偶者の精神的・経済的困窮:
- 離婚によって相手方が著しく困窮する場合、社会正義に反すると判断される可能性があります。
本事例のケース
本事例では、以下の理由から、有責配偶者からの離婚請求は棄却されました。
- 別居期間が約2年4か月と、相当長期間とはいえない。
- 7歳の未成熟の子がいる。
- 相手方配偶者が子宮内膜症を患っており、離婚によって経済的に困窮する可能性が高い。
和解の重要性
裁判所は破綻主義を採用していますが、判決になると有責配偶者には厳しい結果になることもあります。和解であれば、当事者双方の事情や意向を考慮した柔軟な解決が可能です。
- 請求する側:早期解決や、慰謝料・財産分与などの条件交渉が可能。
- 請求される側:離婚を拒否する場合でも、条件次第では受け入れられる可能性。
かがりび綜合法律事務所にご相談ください
有責配偶者からの離婚請求は、複雑で専門的な判断を要する問題です。当事務所では、豊富な経験と知識に基づき、あなたの状況に合わせた適切なアドバイスとサポートを提供します。
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