このページの目次
離婚問題の複雑性|「有責配偶者」からの離婚請求は認められる? 別居期間・単身赴任と財産分与の基準時を徹底解説
こんにちは。大阪の弁護士法律事務所かがりび綜合法律事務所、代表弁護士の野条です。
離婚を考えている方の中には、「自分に離婚の原因がある(有責配偶者である)けれど、もう夫婦関係は終わっている。それでも離婚できないの?」という疑問や、「別居期間が長いけれど、財産分与の対象はいつまで?」、「単身赴任中の財産はどうなるの?」といった悩みを抱えている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
日本の法律では、原則として「有責配偶者」からの離婚請求は認められていません。しかし、この原則には厳格な例外があり、特定の条件を満たせば有責配偶者からの離婚請求が認められるケースもあります。
今回は、この「有責配偶者からの離婚請求」について、その原則と例外、特に「別居期間」や「単身赴任」が例外判断にどう影響するのか、そして「清算的財産分与の基準時」についても、具体的な裁判実務の考え方を交えながら詳しく解説します。このブログ記事が、あなたの離婚問題解決への一歩を後押しできれば幸いです。
1.改めて確認|日本の離婚原因と「有責配偶者」
日本の民法第770条1項は、裁判上の離婚原因を5つ定めています。そして、「有責配偶者」とは、これらの離婚原因(不貞行為、DV、悪意の遺棄など)を作った側の配偶者のことを指します。
原則として、有責配偶者からの離婚請求は、信義誠実の原則に反するため、裁判所には認められません。これは、自ら夫婦関係を破綻させておきながら、相手方の意思に反して離婚を求めるのは道義的に許されないという考えに基づいています。
裁判例に見る原則の適用
過去の判例(東京地裁昭和62年2月28日判決→最高裁昭和63年12月8日判決)のように、有責配偶者による離婚請求が、原則として裁判所に認められないことを明確に示しています。
2.例外|「有責配偶者」からの離婚請求が認められる3つの要件
しかし、最高裁判所は、特定の厳格な要件を全て満たす場合に限り、有責配偶者からの離婚請求を例外的に認めるという判断を示しています(最判昭和62年9月2日)。この要件は以下の3つです。
- 夫婦の別居期間が相当長期間に及ぶこと
- 夫婦間に未成熟の子がいないこと
- 相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に過酷な状況に陥らないこと
これらの要件は、一つでも欠けると原則として離婚は認められません。本記事では特に「別居期間」の要件に焦点を当てて解説します。
3.例外判断の鍵|「別居期間」の長さと「婚姻関係破綻」
上記3要件のうち、「別居期間が相当長期間に及ぶこと」は、有責配偶者からの離婚請求を認めるか否かを判断する上で極めて重要な要素です。
(1) 「相当長期間」の目安
「相当長期間」が具体的に何年を指すかは、個別の事案によって判断が異なりますが、一般的には概ね10年程度が一つの目安とされています。しかし、別居に至った経緯、別居中の夫婦関係、子の状況、相手方配偶者の生活状況など、様々な要素を総合的に判断して決定されます。
(2) 別居期間の扱いと「婚姻関係破綻」の基準時
ご提供いただいた資料の「別居後の財産分与」の項目にあるように、財産分与の対象となる財産の基準時は、原則として別居時とされています。これは、夫婦の共同生活が別居によって実質的に破綻したとみなされるため、別居後に夫婦の一方の努力で築かれた財産は、財産分与の対象外となるのが原則だからです。
しかし、この基準時がいつになるか、判断が難しいケースもあります。
- 別居と別居が繰り返される場合: 資料の記載にもある通り、離婚に至るまでの間に、同居と別居を繰り返しているケースがあります。この場合、最後の別居が基準となることが多いですが、全体としての婚姻期間や別居期間を総合的に判断します。例えば、一時的な冷却期間としての別居や、短期間の同居で財産形成に寄与していないような場合は、一時的な同居期間と評価されることがあります。
- 単身赴任中の場合: ご提供いただいた資料の「単身赴任中の財産分与の基準時はいつとなる」の項には、単身赴任中に夫婦が離婚の申し出をした場合、財産分与の基準時について詳細な解説があります。 単身赴任は、夫婦の意思による別居ではないため、原則として単身赴任期間中の財産も財産分与の対象となります。しかし、単身赴任中に夫婦関係が事実上破綻したと認められる場合は、その時点以降の財産は対象外となることもあります。 資料では、**「①離婚申出の時、②その後に一時帰宅して最終的に自宅を出た日、③単身赴任期間終了時」**などが基準時として考えられるとされており、財産形成の経済的な変化がほとんどない場合は、①または②の時点が基準時となるとされています。また、財産形成や財産消費が継続的に行われている場合は、③を基準時とすることもあります。 重要なのは、単身赴任中であっても、夫婦が離婚を意識し、経済活動や財産形成に影響が出ると判断される場合は、破綻時を基準とすることになるという点です。
4.「有責性考慮の必要性」と離婚訴訟の現実
ご提供いただいた資料の「2 有責性考慮の必要性」にも記載がある通り、現在の実務では、有責性の追及は当事者のプライバシー侵害に繋がりうるため、その主張は一定程度類型化され、節度をわきまえるべきであるとされています。これは、いたずらに相手の有責性を主張するよりも、婚姻関係の破綻を客観的な事実に基づいて立証することに重点が置かれる傾向があることを示しています。
また、相当期間の別居があったとしても、有責性がある場合(特に暴力や脅迫的言動があった場合)には、有責配偶者からの離婚請求を棄却するという裁判例も存在します。これは、たとえ別居期間が長くても、相手方を苦しめた事実がある場合、その有責性が離婚請求を妨げる要因となることを意味します。
5.離婚問題を弁護士に相談すべき理由
「有責配偶者からの離婚請求」は、原則と例外があり、特に「別居期間」や「単身赴任」が絡む場合、その判断基準は非常に複雑です。また、清算的財産分与の基準時を正確に判断し、適切な財産分与を行うためには、専門的な知識と経験が不可欠です。
ご自身だけでこれらの問題を解決しようとすると、法的な見落としや、思わぬ不利益を被るリスクが高まります。弁護士に相談することで、以下のようなメリットがあります。
- 的確な法的判断と戦略立案:あなたの状況を詳細にヒアリングし、過去の膨大な裁判例や最新の判例動向を踏まえ、最も有利な解決策を提案します。特に有責配偶者からの請求が認められる可能性や、財産分与の基準時などを正確に判断します。
- 証拠収集のサポート:離婚原因や財産状況の立証に必要な証拠(別居期間の証明、財産資料など)の収集をサポートします。
- 交渉のプロによる代理:感情的になりがちな相手方との直接交渉を弁護士が代行することで、冷静かつ円滑な話し合いを進め、あなたの権利を最大限に守ります。
- 裁判手続きの代理:調停や裁判になった場合も、あなたの代理人として法廷で主張・立証を行い、最適な結果を目指します。
- 精神的負担の軽減:複雑でストレスの多い離婚手続きを専門家に任せることで、あなたの精神的な負担を大きく軽減し、新たな人生の準備に集中できます。
まとめ
「有責配偶者からの離婚請求」は原則として認められませんが、長期の別居期間、未成熟の子の不在、そして相手方配偶者が離婚によって過酷な状況に陥らないことという厳格な要件を満たせば、例外的に認められる可能性があります。また、財産分与の基準時も、別居期間や単身赴任の状況によって複雑に判断されるため、専門的な知識が不可欠です。
大阪の弁護士法律事務所かがりび綜合法律事務所では、離婚問題に特化した豊富な知識と経験を持つ弁護士が、親身になってあなたの問題解決をサポートいたします。
「自分に原因があるからと諦めている」「別居期間が長いけど、財産分与が不安」と悩む前に、まずは一度、専門家にご相談ください。初回相談は無料ですので、安心してご連絡いただけます。
私たちは、あなたの新たな一歩を全力で応援します。
