弁護士法人かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条健人です。
今回は、離婚にまつわる財産分与、慰謝料、年金分割という、お金に関する三つの重要なポイントについて、よくあるご質問にお答えします。
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相談例10:財産分与では、どの時点の財産が対象になりますか?
回答:原則は「別居時点」の財産です。
財産分与の対象となる財産は、夫婦が共同で築き上げた財産です。実務上は、夫婦の協力関係が切れたとみなされる**「別居時点」**の財産を基準とするのが一般的です。
しかし、別居が単身赴任の延長であったり、別居の理由が曖昧だったりする場合など、**「いつが別居時点なのか」**という点で争いになることがあります。このようなケースでは、複数の時点での財産状況を証明する必要があり、手続きが複雑化します。
どの時点を基準として主張すべきかは、その後の交渉や裁判に大きく影響するため、慎重な判断が必要です。離婚問題に詳しい弁護士に相談し、最も有利な戦略を立てることをおすすめします。
相談例11:離婚に伴い、慰謝料を請求したいのですが、可能ですか?
回答:相手に「有責行為」があれば可能です。
慰謝料は、離婚の原因を作った側(有責配偶者)が、相手に与えた精神的苦痛に対して支払うものです。
- 典型的な有責行為 不貞行為(不倫)やDV(身体的・精神的暴力)がこれに当たります。
- 個別事情による有責行為 これら以外でも、裁判例では、悪意の遺棄(生活費を払わないなど)や浪費、性的問題など、個別の事情によって有責行為と認められ、慰謝料が認められるケースもあります。
ただし、協議や調停の段階で慰謝料を支払ってもらうためには、相手が支払義務を認める必要があります。相手が応じない場合は、最終的に離婚裁判を起こし、主張・立証を行っていく必要があります。
相談例12:離婚の際の年金分割とは何ですか?
回答:婚姻期間中の厚生年金記録を分割する制度です。
年金分割とは、婚姻期間中に夫婦の一方(主に夫)が厚生年金に加入していた場合、その期間の保険料納付記録を夫婦間で分割し、将来受け取る年金額を調整する制度です。これにより、専業主婦やパートで働く妻も、夫の年金の一部を受け取ることができ、老後の生活を安定させることができます。
年金分割の2つの種類
- 3号分割 平成20年4月1日以降の、国民年金第3号被保険者(専業主婦など)の期間に限っては、相手の合意がなくても年金分割が可能です。
- 合意分割 それ以前の期間や、第3号被保険者ではない期間は、原則として夫婦の合意が必要です。
合意分割には、夫婦で年金事務所に行く必要がありますが、それが難しい場合は、以下のいずれかの方法で分割割合を定めた上で、単独で手続きを進められます。
- 公正証書を作成する
- 調停で取り決める
- 裁判所で決めてもらう
年金分割は、老後の生活を左右する非常に重要な手続きです。ご自身の年金記録や相手の年金記録がどうなっているか、また、どのような方法で分割を進めるべきか、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。