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裁判所・調停委員が親権者を決定する際の7つの判断基準【大阪の離婚弁護士が解説】
大阪のかがりび綜合法律事務所で離婚問題に特化している弁護士の野条です。離婚に際して、お子様の親権についてお悩みの方もいらっしゃるのではないでしょうか。
裁判所や調停委員が親権者を決定する際には、「父母のどちらに引き取られるのが、お子様にとって最も幸せか」を第一に考えて判断します。親権争いを有利に進めるためには、これらの判断基準をしっかりと把握しておくことが重要です。
ここでは、親権獲得に向けて押さえておきたい7つの判断基準について、大阪の離婚問題に強い弁護士が詳しく解説します。
1. お子様への愛情の深さ
親権者を決定するための判断基準の一つは、「お子様にどれだけ愛情を注いでいるか」です。お子様に対してより大きな愛情を持っていると判断された親が、親権獲得において有利になります。
愛情の大きさは、お子様との関わり方、過ごし方、一緒に過ごした時間の長さなどから判断されます。例えば、お子様との時間を優先するために仕事をセーブしたり、お子様を第一に考えて生活してきた経緯があるならば、その愛情の深さが伝わるでしょう。
一般的に、仕事で家を空けることが多く、お子様と過ごす時間が母親よりも短くなりがちな父親にとっては不利になりやすい基準です。親権争いに勝つためには、できるだけお子様と一緒に過ごす機会を増やし、今後も継続して過ごせることを具体的にアピールする必要があります。
ただし、お子様への愛情が評価されれば必ず親権が取れるわけではありません。愛情はあくまで親権者を決める判断基準の一つに過ぎず、他の事情も総合的に考慮して判断されます。
2. 監護実績の有無と今後の養育環境
離婚調停までの「監護実績」も、親権者を判断する上で非常に重要なポイントです。
監護実績とは、これまでお子様とどのように過ごし、どのように世話をしてきたかという子育ての実績を指します。具体的には、以下のような行動が該当します。
- 日々の食事や弁当の準備
- お子様の健康管理
- 入浴、着替え
- 勉強や遊びの付き添い
- 寝かしつけ
- 保育園・幼稚園・習い事などの送り迎え
- 育児休暇の取得
これまでにきちんと子育てを行い、お子様と多くの時間を共有してきた親であれば、今後もこれまでと同じように養育できると判断されやすくなります。これまでの育児経験を具体的にアピールすることが大切です。
なお、小学校・幼稚園・保育園の連絡帳、お子様の監護を行っていることがわかる写真、父母間で行われたお子様の監護に関するやり取りなどが監護実績の証拠となります。供述の裏付けとなるため、あらかじめしっかりと準備しておきましょう。
3. 親の経済状況や健康状態の安定性
親の経済状況や健康状態が安定しているかどうかも、重要な判断基準です。お子様を育てるには多大な費用がかかるため、経済的な余裕がある場合は有利になりやすく、特に相手よりも収入が多い場合はアピールポイントとなるでしょう。
しかし、収入が少ない場合でも、相手からの養育費や財産分与などで養育費をカバーできると判断されることも少なくありません。そのため、収入が少ないからといって親権を諦める必要はありません。
ただし、養育費で仮にお子様の生活費がまかなえても、ご自身の生活資金が確保できず、お子様との生活に支障をきたす恐れがある場合は、親権獲得が難しくなることもあるため注意が必要です。ある程度安定した経済状況がなければ、不利になる可能性があると考えておいた方がよいでしょう。
また、親の健康状態についても、肉体的・精神的に問題があると子育てに支障が出ると判断され、親権の獲得が難しくなることがあります。最低限の子育てが可能であれば親権者になれるケースもありますが、重い病気を患っている場合は注意が必要です。持病があっても問題なく子育てできるのであれば、育児に支障がないことをアピールするために、病院で診断書をもらっておくことをお勧めします。
4. お子様の意思の尊重
裁判所が親権者を決める際は、お子様の意思が尊重されます。特に、お子様の年齢が15歳以上であれば、その意向は非常に重要な判断基準となります。
ケースにもよりますが、例えば母親が父親よりも有利な状況にある場合でも、お子様が父親と暮らしたいと希望すれば、その気持ちが優先されることがあります。親としては、親権を取りたい気持ちがあっても、お子様の意思を尊重することが重要です。
なお、一般的に意思が尊重されるのは15歳以上とされていますが、15歳未満であっても年齢によってはある程度お子様の意思が考慮されます。10歳前後であればすでに意思能力が備わっていると考えられるため、お子様の意思を尊重して親権者を決定するケースも増えています。
5. 複数のお子様がいる場合のきょうだい不分離
親権争いのポイントの一つに「きょうだい不分離の原則」という考え方があります。これは、「お子様が複数いる場合は、きょうだいを離さずに一緒に養育できるかどうか」という判断基準です。
両親の離婚によってどちらかの親と離れてしまうだけでなく、きょうだいとまで離されてしまうと、お子様の心に大きなショックを与えると考えられています。そのため、きょうだいを一緒に育てられる環境が整っていることが重要視されます。
6. 面会交流への前向きな姿勢
お子様と離れて暮らす親との「面会交流」を認めることができるかという点も、親権を得るための重要なポイントの一つです。「面会交流」はお子様の権利です。
たとえ離婚相手のことが嫌いだったり、心理的に受け付けられなかったりしても、お子様にとっては大切な親であることを忘れずに、面会交流は認めるようにしましょう。
なお、お子様に対して虐待やDVがあった場合は、面会交流を認めなくても不利にはなりません。あくまでも、お子様の利益を最優先していることをアピールすることを忘れないようにしましょう。
7. お子様との心理的な結びつきの強さ
親権争いで「母親が有利」と言われる理由の一つに、「母性優先の原則」という考え方がありました。これは、特に乳幼児の親権者には「母性を有するものが望ましい」とする考え方です。日本では基本的に「母性を有するもの」は母親であると判断されることが多く、母親が親権争いでは有利とされてきました。
しかし、近年では共働き家庭が増えたことで、父親もお子様の世話をするケースが増えてきました。そのため、「お子様との心理的な結びつきの強い方を親権者とするべき」だという考え方に変化してきています。
したがって、「母親があまり育児をしていない」「母親が仕事に専念している」といった場合は、父親でも親権を獲得できる可能性が高まっています。
かがりび綜合法律事務所では、大阪を中心に多くの離婚問題を解決に導いてきました。親権問題でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。親身になってサポートさせていただきます。