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【塾代・習い事】養育費に含まれる?それとも別枠請求できる?弁護士が教える「特別経費」の真実
「子供が中学受験をしたいと言い出したけれど、養育費だけで足りるわけがない」 「離婚前から続けているピアノ、私の収入だけでは諦めさせないといけないの?」 「元夫は高収入なのに、算定表通りの金額しか払わないと言っている……」
離婚後の生活において、親権者となった方(多くはお母様)の最大の悩みの一つが**「子供の教育費」**です。
特に、塾の費用、夏期講習、ピアノやサッカーなどの習い事、そして私立学校への進学費用。これらは家計を大きく圧迫します。相手方に「養育費とは別に払ってほしい」と頼んでも、「養育費に含まれているから払う義務はない」と突っぱねられてしまうケースが後を絶ちません。
本当にそうなのでしょうか? 結論から申し上げますと、**「原則は含まれているとされるが、別枠で請求できるケースは十分にある」**です。
今回は、多くの皆様が誤解されている「養育費と教育費の関係」、そしてあきらめずに請求するための**「特別経費」**という考え方について、弁護士が徹底解説します。
1. なぜ「含まれている」と言われるのか?(算定表のカラクリ)
まず、相手方が主張する「養育費に含まれている」という理屈について解説します。これは、家庭裁判所が実務で使用している**「養育費算定表」**に基づいています。
公立学校の費用は「込み」になっている
裁判所が作成した算定表の金額は、標準的な生活費をベースに計算されています。この中には、以下のものが「標準的な学習費」として既に組み込まれています。
- 公立の小・中学校の授業料や給食費
- 教科書代、通学用品代
- 平均的な範囲内での補習塾や習い事の費用
つまり、子供が公立学校に通い、世間一般的に平均とされる程度の塾や習い事をしているだけであれば、それは「毎月の養育費の中でやりくりしてください」というのが裁判所の基本的なスタンスなのです。
ここだけを聞くと、「やっぱり請求できないのか」と落胆されるかもしれません。しかし、ここからが本題です。
2. 「別枠請求」ができるカギ=「特別経費」とは?
子供の教育や才能を伸ばすための費用が、すべて「平均」で収まるわけではありません。算定表が想定している「標準的な額」を大きく超える費用がかかる場合、それは**「特別経費」**として、養育費とは別に分担を求めることができる可能性があります。
特に、ご相談の投稿にもあった以下の3つのケースは、別枠請求が認められる可能性が高い重要なポイントです。
ケース①:相手が通うことを強く推奨していた(承諾の有無)
最も強い根拠となるのが、義務者(支払う側)の**「同意」や「推奨」**です。
- 離婚協議の際、「子供は私立に行かせよう」「この塾には通わせ続けよう」と合意していた。
- 別居前、相手自身が熱心にその習い事を勧めていた(例:相手が野球経験者で、子供をリトルリーグに入れた等)。
- 医学部や音大など、特定の進路について相手も賛成していた。
このように、相手もその費用がかかることを認識し、認めていた場合は、「算定表に含まれている」という反論は通用しにくくなります。信義則上、費用を分担すべきだからです。
ケース②:医学部受験など、特別な高額費用がかかる
私立大学の医学部、歯学部、あるいは芸術系の大学や留学費用などは、明らかに一般的な公立学校の教育費とは桁が違います。 これらをすべて「月数万円の養育費」で賄うのは物理的に不可能です。
このような「例外的に高額な費用」については、親の資力や学歴、社会的地位などを考慮し、標準的な養育費とは別に分担を決めるべきだと判断される傾向にあります。
ケース③:相手が高収入で、それが家庭の「標準」だった
ここが見落とされがちなポイントです。 「標準的な学習費」とは、あくまで世間一般の平均です。しかし、義務者(元夫など)が経営者や医師などで高収入である場合、その家庭における「標準」は世間一般よりも高いはずです。
「父親にあれだけの収入があるのだから、子供が高度な教育を受けるのは不自然ではない」 「婚姻中も高額な習い事をさせていたのだから、離婚したからといって急にやめさせるのは子供の福祉に反する」
このように、両親の収入・学歴・地位に照らして、その費用をかけることが不相当でない場合は、特別経費として認められる余地が生まれます。
3. 具体的にいくら請求できる?(計算の考え方)
では、別枠請求が認められるとして、塾代や月謝の「全額」を払ってもらえるのでしょうか? ここには、実務上の計算ルール(按分・あんぶん)が存在します。
全額請求は難しいことが多い
裁判所が特別経費として認める場合でも、「領収書の金額すべてを相手に払わせる」という判断になることは稀です。なぜなら、親権者(あなた)にも子供を扶養する義務があるからです。
一般的には、以下のステップで計算します。
- 実際にかかった費用(塾代や私立学費など)を算出する。
- そこから、算定表に既に組み込まれている**「公立学校相当の教育費」**を差し引く。(二重取りを防ぐため)
- 残った金額(=純粋なプラスアルファ部分)を、**元夫と元妻の「収入比」**で分け合う。
例えば、特別にかかる費用が月額5万円あり、元夫の年収が600万、元妻の年収が200万だとします(ざっくり3:1の割合)。 この場合、特別経費の5万円のうち、約37,500円を元夫が負担し、残りは元妻が負担する、といったイメージです。 ※実際の計算はもっと複雑な係数を使いますが、考え方としては「収入に応じて山分けする」のが基本です。
4. 諦める前に確認!交渉を有利に進めるための証拠
もし今、相手から支払いを拒否されているなら、感情的に訴えるだけでなく「証拠」を集めてください。
- LINEやメールの履歴: 「〇〇中学に行かせたいね」「ピアノ続けさせてあげよう」といった相手の発言は残っていませんか?
- 過去の通帳記録: 婚姻期間中、相手の口座から塾代や月謝が引き落とされていた事実は、相手がそれを「容認していた」強力な証拠になります。
- 相手の学歴や職業: 相手自身が私立出身であったり、高学歴である場合、「自分の子供にも同等の教育を受けさせるべき」という主張の補強材料になります。
5. 「一度決めた養育費」でも変更できる?
「離婚時に『これ以上請求しない』と約束してしまった」 「公正証書を作ってしまったから、もう無理ですよね?」
と相談されることがありますが、諦める必要はありません。 養育費には**「事情変更」**という概念があります。
- 子供が予想外に進学を希望した
- 子供に特別な才能が見つかり、本格的なレッスンが必要になった
- 私立中学に合格した
これらは、離婚時には予測できなかった事情の変更として、養育費の増額請求(または特別経費の請求)の理由になり得ます。 「公正証書があるから絶対無理」ではなく、新たな事情が発生した以上、協議や調停を申し立てる権利はあなたにあります。
6. 一人で悩まず、専門家の力を
教育費の問題は、単なるお金の問題ではなく、**「子供の未来の選択肢」**を守れるかどうかの戦いです。
相手方が「算定表通りに払っているから文句を言うな」と言ってきたとしても、それはあくまで「原則」の話。あなたの家庭の事情、子供の個性、そして相手の経済力、それぞれのケースに合わせた「正当な権利」があります。
特に以下のような方は、弁護士を入れることで結果が大きく変わる可能性があります。
- 相手が高圧的で、話し合いにならない
- 相手が経営者や自営業で、正確な収入が見えにくい
- 「別枠請求」の計算方法がよくわからない
当事務所では、大阪を中心に数多くの養育費・離婚問題に対応してまいりました。 「ピアノを辞めさせたくない」「塾に通わせてあげたい」 その親心を法的にサポートし、適切な分担金を勝ち取るための戦略をご提案します。
「含まれてるから無理」と決めつけず、まずは一度ご相談ください。子供の未来のために、今できる最善の一手を一緒に考えましょう。
【大阪の法律事務所|離婚・養育費・特別経費のご相談】 初回相談は無料でお受けしているケースもございます。お気軽にお問い合わせください。
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