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熟年離婚を成功させるには?別居・住宅ローンをめぐる離婚のポイントを解説
熟年離婚で特に複雑になる「お金」の問題
熟年離婚は、夫婦の婚姻期間が長いため、財産分与や年金分割といった金銭的な問題が特に複雑になり、金額も高額になる傾向があります 。
財産分与は、法律上の制度であり、原則として支払いを拒否することはできません 。たとえ一方が専業主婦(夫)であったとしても、家事や育児を通して家計に貢献していたと見なされ、「2分の1ルール」に基づき、夫婦が協力して築いた財産を公平に分け合うのが基本です 。
年金分割もまた、熟年離婚において重要な要素です 。この制度は、婚姻期間中の厚生年金記録を分割するもので、「合意分割」と「3号分割」の2つの方法があります 。特に、専業主婦(夫)であった期間(平成20年4月1日以降)については、相手の合意なく単独で請求できる「3号分割」制度があります 。年金分割は財産分与とは異なり、別居後の納付分も含め、離婚時の前月までが対象となるため、手続きのタイミングが重要となります 。なお、年金分割には離婚後2年以内という請求期限があるため、注意が必要です 。
別居が離婚に与える影響
別居そのものは、民法上の離婚事由にはあたりません。しかし、長期間にわたる別居は、夫婦関係がすでに破綻していると認められる根拠となり、「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として離婚が認められる可能性があります 。一般的には、3〜5年程度の別居期間が目安とされていますが、不貞行為やDVといった有責行為が原因で別居に至った場合は、より短い期間でも離婚が認められる傾向にあります 。
注意すべきは、正当な理由のない家出は「悪意の遺棄」とみなされ、有責配偶者として離婚に不利な影響を与えるリスクがあることです 。別居を開始する際は、事前に相手にその意図を伝え、書面で残しておくことが賢明です 。
複雑な住宅ローン問題の解決策
夫婦で住宅ローンを組んでいる場合、離婚後も共有名義のままにしておくと大きなリスクを伴います 。もし一方が返済を滞納した場合、もう一方に返済義務が集中し、自己破産に至る可能性すらあります 。
この問題を解消するためには、主に以下の3つの方法があります。
- 借り換え: 夫または妻の単独名義で新たな住宅ローンを組み直し、元のローンを一括返済する方法です 。共有名義を解消し、家に住み続けられるメリットがありますが、単独名義での再審査には高い収入や年齢といった条件が求められるため、ハードルが高いと言えます 。
- 一括返済: 預貯金や退職金などでローンの残債を一括で完済する方法です 。ローン負担から完全に解放されるメリットがある一方、ローン残債が多い場合、現実的に資金を用意することは難しい方法と言えます 。
- 売却: 不動産を売却し、売却代金でローンを完済し、残った利益を夫婦で分け合う方法です 。ローン負担と将来のトラブルから解放されるメリットがあり、ローンが残っていても売却額が上回る「アンダーローン」の状態であれば、この方法が最も現実的でリスクが低い解決策となります 。ただし、売却価格によってはローン残債が残る「オーバーローン」のリスクがあるため、注意が必要です。