東京高裁平成24年決定:子の引渡命令の慎重な運用?

「別居中の夫が子どもを連れ去ってしまいました。すぐに裁判所に『子の引渡命令』を出してもらえますか?連れ去った方が有利になるなんて納得できません!」

離婚や別居の際に、一方の親が他方の親の同意なくお子さんを連れ去るケースは少なくありません。このような場合、被害を受けた親は、裁判所に「子の引渡命令」や「監護者指定の審判」を申し立てることを考えます。

今回は、子の引渡命令の判断における重要な裁判例である東京高裁平成24年決定と、連れ去り後の監護者指定の申し立てに関する福岡高裁平成20年決定を比較しながら、お子さんの連れ去りがあった場合の法的対応について、大阪の離婚弁護士 野条健人が解説いたします。

東京高裁平成24年決定:子の引渡命令の慎重な運用

前回の記事でも解説した東京高裁平成24年10月18日決定は、審判前の保全処分としての子の引渡命令の発令には、極めて慎重な判断が必要であると強調しました。その理由として、お子さんへの精神的負担や、複数回の引渡しのリスクを挙げています。

この決定では、子の引渡命令が認められるためには、単に「早く子どもを取り戻したい」というだけでなく、

  • 監護者がお子さんを監護するに至った原因が強制的な奪取またはそれに準じたものであるかどうか
  • 虐待の防止、生育環境の急激な悪化の回避など、お子さんの福祉のために引渡しを命じることが必要であるかどうか
  • 本案の審判の確定を待つことによってお子さんの福祉に反する事態を招くおそれがあるといえるかどうか

といった厳格な要件を満たす必要があるとされました。

福岡高裁平成20年決定:離婚訴訟係属中の監護者指定

一方、福岡高裁平成20年11月27日決定は、離婚訴訟が係属中の夫婦における子の監護者指定の審判について判断を示しました。このケースでは、妻が主として監護していたお子さんを、夫が妻の意思に反して連れ去りました。その後、妻が子の監護者指定の審判を申し立てたのに対し、原審の福岡家裁は妻の申し立てを認めましたが、抗告審の福岡高裁はこれを却下しました。

福岡高裁は、離婚訴訟係属中に子の監護者指定の審判を求めることができるのは、お子さんの福祉の観点からして早急に監護者を指定する必要があり、離婚訴訟の帰趨を待っていることができないような場合に限られるという、より制限的な解釈を示しました。

連れ去りは有利になるのか?福岡高裁の判断

連れ去りという行為は、被害を受けた親からすれば到底納得できるものではありません。「連れ去った方が有利になるのではないか?」という疑問が生じるのは当然です。

しかし、福岡高裁は、子の福祉の観点から判断するので、連れ去りの事実のみをもって直ちに監護者指定を認めるわけにはいかないとしています。このケースでは、夫が妻とお子さんの面会交流の在り方を改善している点を重視し、早急な監護者指定の必要性はないと判断しました。

二つの高裁決定から読み解くこと:お子さんの福祉が最優先

これらの二つの高裁決定からわかることは、子の引渡しや監護者の指定においては、形式的な理由や一方の親の都合だけでなく、常にお子さんの福祉が最優先に考慮されるということです。

  • 東京高裁決定は、安易な子の引渡命令が、お子さんに与える精神的負担や混乱を避けるために、厳格な要件の下でのみ認められるべきであることを示しています。
  • 福岡高裁決定は、連れ去りという違法な行為があったとしても、その後の監護状況や面会交流の状況などを総合的に考慮し、お子さんの福祉にとって何が最善かを判断する姿勢を示しています。

お子さんの連れ去りや親権・監護権でお悩みなら

お子さんの連れ去りや、離婚後の親権・監護権、子の引渡しなどでお悩みの方は、早急に弁護士にご相談ください。それぞれのケースの状況を詳細に分析し、お子さんの最善の利益のために、適切な法的手段を検討する必要があります。

大阪の離婚弁護士 野条健人は、お子さんに関する様々な問題について、豊富な知識と経験に基づき、親身にサポートいたします。

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野条 健人 代表弁護士
大阪を拠点に、男女問題・離婚・DV・モラハラなど、デリケートな問題を抱える方々の相談に親身に対応しています。ただ法律的な解決を目指すだけでなく、依頼者様の気持ちに寄り添い、心の負担を少しでも軽くすることを大切にしています。 「相談してよかった」と思っていただけるよう、一人ひとりのお話を丁寧に伺い、最適な解決策をご提案します。お悩みの方は、お気軽にご相談ください。

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