有責配偶者からの離婚請求がなされた場合について

 こんにちは!

 かがりび綜合法律事務所代表弁護士の野条です。

 本日は、有責配偶者からの離婚請求がなされた場合についてです。

 これまで、有責配偶者からの離婚請求について、最高裁判例の3つの要素(3つの条件)についてもお話しさせていただきました。

 有責配偶者からでも3つの要素が認められる場合、もしくは相手方が離婚に応じる場合には離婚が認められるということになります。

 最近の裁判例では、以下のようなものがあります。


 この事例では、子2人が18歳, 16歳であり、夫の不貞が婚姻破綻の原因であり、夫が別居して、離婚請求を妻側にしてきたという事案です。

 不倫相手の女性との 同棲は8年も過ごし、婚姻の同居期間8年、別居期間 13年にもなります。裁判例では、この間夫は相当の婚姻費用分担を履行していること、病弱だった子も現在では日常生活に支障がないこと、 家裁調査官調査では2人とも親の離婚によって心情的な影響を受ける可能性が 低いこと妻はパートを5年勤続していること,一部和解において,離婚慰謝料 150万円と子の大学進学費用 150万円を支払う合意が成立していることなどから, 裁判所は夫からの離婚請求を認めた(大阪高判平 19[2007] 5-15判タ 1251 号 312 頁)とされている事例があります。

 この事例を見てもそれだけで離婚が認められるのかと思われる方もいらっしゃるのかもしれません。考え方の本質は、夫婦関係が破綻しているかどうかを軸にして、あまりにも相手方に過酷にならない場合には一定の制限を元に離婚を認める方向で考えています。例えば、夫婦関係があまりにも破綻しているにもかかわらず、離婚を認めないとすると、別居自体が夫婦生活が本旨に反するにもかかわらず、事実上認めることになりかねないこと、法律婚よりも事実婚を事実上安定させてしまうことなどに鑑みると、裁判所は破綻主義的な枠組みは今後も進めていくことになると思います。

 そこで、話を戻します。有責配偶者から離婚請求がなされた場合にはどうしたらいいのでしょうか?考え方は二つあります。

 一つは、相手方に気持ちを戻ってもらうまで、待つ、あるいは徹底して現状を維持して離婚には応じないという考え方です。

 もう一つは、いずれ離婚するのであれば、よりよい条件で離婚に応じるという考え方です。

 今回は後者の立場についてご説明いたします。

 先ほどから、有責配偶者からの離婚請求であったとしても、破綻主義からすると、いずれは離婚する可能性があります。

 裁判となると、財産分与は2分の1、離婚慰謝料は裁判例の相場に合わせることになります。もっとも、離婚交渉、協議であれば別です。すなわち、離婚に応じるだけの条件があれば、別に財産分与や慰謝料は裁判例に合わせる必要はありません。ここで検討いただきたいのは、相手方の立場になって検討してみるということです。すなわち、相手方の有責配偶者からすると、容易に離婚ができる場合は少ないです。早く離婚してもらうためには、相手である離婚請求されている側の条件を飲むしかないということになります。このため、パワーバランスからすると離婚条件の交渉を有利に進むためには、有責配偶者から離婚請求されている側にイニシアティブがあると言えます。このような条件、立ち位置に基づき交渉することでより良い条件が得られることあります。例えば、相手方から自宅の全てを財産分与してもらう、扶養的財産分与して、年金に入るまで生活費を出してもらう、条件面での交渉は非常に重要になっていきます。

 

 お困りの方は、一度かがりび綜合法律事務所までご相談ください。何卒宜しくお願いします。

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